【勉強会報告】パラレルキャリアを考える(2026年2月25日)
2026年2月25日にDE&I研究会で第20回目となるランチ勉強会を実施しました。今回のテーマは「パラレルキャリア」です。今回は一般社団法人パラレルプレナージャパンの理事である原純哉さんをファシリテーターにお迎えして、ご自身がパラレルキャリアを始められたきっかけや今のキャリア満足度などご自身の経験を踏まえた「自分らしいキャリア」の考え方について共に考えました。
【勉強会概要】
- タイトル:パラレルキャリアを考える
- ファシリテーター:原純哉さん
- 実施日:2026年2月25日 12:00-13:00
- 勉強会概要
- パラレルキャリアとは
- パラレルキャリアに至るまで
- パラレルキャリアの効果
- パラレルキャリアの作り方
【登壇者プロフィール】

一般社団法人パラレルプレナージャパン/理事
重機械メーカー 新事業企画担当
Sketch Communication 代表
原 純哉さん
大学院で造船工学を修了後、タンカー建造に惚れ込み重工業メーカに入社。18年にわたり造船設計、鉄道車両新規事業開発、自律ロボット事業開発に従事。現在は同社で共創施設の運営を行いオープンイノベーション支援を推進中。並行して、エンジニア、事業開発、コーチングの知見を活かし、事業ビジョンや企業理念を図解を使って整理するサービスや、図解を用いた対話ファシリテーションを提供するSketch Communication事業を営む。
【勉強会内容】
パラレルキャリアとは?
パラレルキャリアとは、本業を持ちながら、もうひとつ、あるいは複数の役割や活動を持つ働き方を指します。副業との違いは、必ずしも収入を伴う必要はなく、自分の関心や価値観に基づいた活動も含まれる点が特徴です。
近年、DE&Iの文脈において、パラレルキャリアが注目されています。DE&Iは、単に多様な人材が存在することをゴールとするのではなく、その違いが尊重され、公平な機会が提供され、それぞれの違いが活かされる状態をつくることが重要です。パラレルキャリアは、その実現に向けた一つのヒントになるといわれています。
パラレルキャリアの特徴は、人を一つの役割で固定しない点にあります。たとえば「管理職」や「若手」といったラベルで人を認識するのではなく、個人を立体的、多面的な存在として捉えます。また、複数のコミュニティを行き来することで新たな視点が持ち込まれ、固定観念を揺さぶることにもつながります。
すなわちパラレルキャリアは個人の挑戦にとどまらず、組織が多様性をどう受け止めるのかという問いでもあります。こうした在り方はインクルージョンを体現する働き方ともいえるでしょう。
パラレルキャリアに至るまで
ここからは原さんご自身がパラレルキャリアに至った経緯について、チャートを用いて振り返っていただきました。


出身地の佐賀から広島大学工学部に進学し、大学では造船を学びました。就職先は造船事業のある企業を選びました。チャレンジングでイノベーティブな仕事ができると思ったからです。実際に船の設計に携わるようになって、紙の上で描いていたものが何百倍もの大きさの船として形になる。その瞬間に立ち会えたときは、本当にやりがいを感じました。ものづくりの面白さにすっかりのめり込んでいましたね。
その後、イギリス駐在も経験したのですが、その頃から少しずつ違和感も出てきたんです。『このまま船をつくり続けるのか?』と。やりきった感覚に近かったかもしれません。そんなときに、社内の有志団体の存在を知りました。サークルのような形で立ち上がっていて、他の事業部の人や他社の人とも関わる機会があったんです。


いろんな人と話す中で、『仕事って船だけじゃないんだ』とそんな当たり前のことに気づきました。それまで何年も船の設計に没頭していたので、自分にできるのは船の仕事だけだと、どこかで思い込んでいたんですよね。その後、縁があって鉄道車両事業に異動することになり、新規事業開発に携わるようになりました。ただ、ここで大きな壁にぶつかります。『これまで積み上げてきたキャリアが、まったく通用しない』と感じました。人間関係でもうまくいかないことがあって、どん底を経験しました。
次の転機は、『東京に新しい部門ができるらしい』という話を聞いたときです。もう一度新しい分野に挑戦したいと思って、東京に行くことを決めました。配属されたのは、社長直轄のプロジェクト本部でした。社長からのミッションをとにかく事業化していく、そんな部署です。ここで初めて事業を自分でつくるという経験を積みました。鉄道のときに、自分の武器が通用しないという感覚はすでに経験していたし、どちらかというとまったく新しい分野で新しい知識が入ってくることを楽しんでいる感覚でした。ただ、ここでもまた壁にぶつかりました。やっぱり人間関係がうまくいかなかったんです。キャリアチャートでいうと、上がったと思ったら落ちて、また上がって落ちて…というのを繰り返していました。『何かがおかしいな』という感覚はずっとありましたね。

それでも潰れずに続けてこられたのは、紙とペンがあったからです。というのも有志団体のカンファレンスに参加したときに、グラフィックレコーディングに出会いました。初めて見たとき『なんてわかりやすいんだろう』と思ったのと同時に、『これ、自分にもできるかもしれない。面白そうだな』と直感的に思ったんです。すぐに自分でも始めてみました。コロナ禍では、オンラインイベントの内容をグラレコにして、登壇者にサプライズで送ったりしていました。DMでお送りすると、すごく喜んでもらえて。本業とは別にもう一つのチャンネルができたことで、仕事でつらいことがあっても立ち直れるようになりました。


続けていくうちに、グラレコの依頼も増えてきて、収入にもつながるようになりました。2023年頃に個人事業主として『Sketch Communication』を立ち上げました。


そうして活動を続ける中で、『自分はただ絵を描いているだけじゃないな』と気づいたんです。グラレコを渡すと、そこから対話が生まれるんですよね。それがすごく面白いなと思って。ただ描いて終わりではなくて、それを見た人の体験にどうつなげるか。セミナーに来た人に渡して対話を生み出したり、夢を聞いてそれをグラレコという形に残したり。そんなことをやっていく中で、自分のやりたいことが見えてきました。“自分で事業をつくる”というよりも、“事業をつくる人を応援したい”と思うようになったんです。本業では“つくる側”にいましたが、グラレコを通じて“支える側”の面白さに気づきました。これは、やってみないと分からなかった発見ですね。
今は、KAWARUBAという施設の運営にも関わっています。新規事業に挑戦したい人たちが集まる場をつくって、そういう人たちを応援する仕事もしています。振り返ると、いろいろなアップダウンがありましたが、今が一番自分らしく働けていると感じています。

パラレルキャリアの効果
パラレルキャリアでの活動は本業と切り離されたものではなく、相互に影響し合う関係にあることが印象的でした。副業での経験が本業に活きることもあれば、本業で培ってきたスキルが別の活動で重宝されることもあります。
原さんご自身も、その両方を実感されているといいます。Sketch Communicationを立ち上げたことで社外との接点が増え、人脈が広がっただけでなく、事業開発や推進の経験が本業にも還元されているとのことでした。
またご自身のスキルを掘り下げてみると、これまでの半生で培ってきたスキルがそれぞれの活動に活きていることにも気づかれたそうです。たとえば、船の詳細設計に携わっていた経験は即興でグラフィックレコーディングを作成するスキルに、鉄道事業や社長直轄プロジェクトでの新規事業探索の経験はSketch Communicationで提供している新事業の壁打ちにもつながっているそうです。
このように、副業が本業に役立つだけでなく、本業での経験、ひいては学生時代を含めたこれまでの人生経験そのものが、パラレルキャリアを築くヒントになっているのです。
パラレルキャリアの作り方
最後に原さんの経験からパラレルキャリアの作り方を教えていただきました。
パラレルキャリアを実践する最初の一歩は、そのとき「面白そう!」と感じたことに足を運ぶことです。その経験がどのようにつながるかを見通すことは難しく、最初は点と点がバラバラに存在しているように見えるかもしれません。それでも自分の興味関心にアンテナを立て、「やってみたい」と思ったことに小さくでも関わってみる。その積み重ねが、後から振り返ったときに一本の線としてつながっていくのです。
実際に原さんご自身も、最初から現在のような形になるとは想像していなかったといいます。しかし結果として、これまでの経験が有機的に結びつき、今の活動につながっていったそうです。

勉強会の後半は質疑応答も行い、時間の使い方や家族とのコミュニケーションについても話題が及びました。本業で手一杯であったり、時間的な制約があったり、あるいは家族の理解を得ることが難しい状況も現実には存在します。原さんご自身がこれまでに工夫されてきた時間の使い方や家族との過ごし方などについてもアドバイスをいただきました。
パラレルキャリアは、何か特別なスキルや明確な計画がなければ始められないものではありません。自分の興味関心に素直に、小さく動き出すことから始まるものなのだと学ぶことができた良い機会になりました。原さん、貴重なお話をありがとうございました。

【DE&I研究会】
2023年4月に立ち上げたダイバーシティのすすめにて運営するコミュニティで、勉強会やコミュニティ形成を通じて、以下2つを実現できる場として設立。
- 本当に意味のあるD&Iが何かを共に考え、行動に繋げる原動力とする
- 自分の周囲を変えられる力を養い、会社に左右されない自分自身の望むキャリアや働き方を見つける
DE&I研究会では毎月1回ペースでランチタイムに勉強会を実施しています。
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