【勉強会報告】働くヒトの健康課題にどう向き合うか(2025年7月16日)
2025年7月16日にDE&I研究会で第17回目となるランチ勉強会を実施しました。今回のテーマは「働くヒトの健康課題にどう向き合うか」です。昨今で注目を集める健康経営。
- 会社がなぜ社員の健康課題に目を向ける必要があるのか
- 働くヒトは具体的にどんな健康課題に直面するのか
- 組織としてどんな支援をすればいいのか
など、健康経営の導入知識として何を考えることが必要かについて、公認心理師のLIB Laboratory代表/今井さいこさんをファシリテータにお迎えして共に考えました。
【勉強会概要】
- タイトル:働くヒトの健康課題にどう向き合うか
- ファシリテーター: 今井 さいこ氏
- 実施日:2025年7月16日 12:00-13:00
- 勉強会概要:
- なぜ企業が社員の健康課題に向き合うのか
- 働く男女が抱える健康課題
- 自分の体調を振り返る
- 健康課題とどう向き合うべきか
【登壇者プロフィール】

今井 さいこさん
LIB Laboratory 代表/公認心理師 / 認定心理士
慶應義塾大学で心理学を専攻。卒業後はベンチャー企業に務める傍ら、心理カウンセラーとしての勉強と実践を積み、女性向けのカウンセリングを開始。2013年からの5年間、妊活支援に特化したメンタルケアサービスを提供。
現在は、睡眠指導者やナチュラルライフセラピスト、アロマテラピーアドバイザーの知識も活かした心理カウンセリングにより、心身共に健康に導くカウンセリング、パフォーマンスを上げるための睡眠改善指導を実施。また企業研修として、メンタルヘルス研修、コミュニケーション研修、ビジネスマナー研修、睡眠マネジメント研修、妊活研修などにも従事。
【勉強会内容】
なぜ企業が社員の健康課題に向き合うのか
社員の健康は本人の問題では?と思っている人も多いと思います。では企業が社員の健康課題に向き合うのはなぜなのでしょうか。
まず背景にあるのは、労働人口の減少です。日本の労働人口は、2050年には現在より約30%も減るといわれており、単純計算では現在の1.4倍の労働力が必要になります。人手不足がますます深刻になる中で、一人ひとりが無理なく健康に働き続けられる環境づくりが急務になっているのです。
さらに女性就業者比率の上昇も影響しているといえます。女性の就業者比率は過去10年で約10%増加しており、今後職場の多様化はさらに進むことが想定されます。人手不足の環境下では、全員が働きやすいと感じる環境づくりを整備することが企業に求められています。
もうひとつ、大きな課題となっているのが日本の労働生産性の低さです(OECDのデータに基づくと日本労働生産性は38か国中32位)。労働生産性の改善も今後日本企業が取り組むべき課題と言われています。
労働生産性とは見える損失(アブセンティーズム)や見えない損失(プレゼンティーズム)、そしてエンゲージメントにて評価されるため、社員の健康状態への対応も会社に求められるのです。
経済産業省による試算では、健康課題による経済的損失も明らかにされています。

労働生産性の向上は、単に欠勤を防ぐことにとどまらず、出勤中のコンディションやエンゲージメントの質にも目を向けることが重要です。
働く男女が抱える健康課題
では実際に働く人が抱えている健康課題として、どんなものがあるでしょうか。
まず、男女共通で多いのが以下2つが挙げられます。
- 生活習慣病:食習慣、運動習慣、喫煙、飲酒などの日々の習慣が、自覚症状のないまま少しずつ病気の発症や進行に影響
- 過重労働や睡眠不足による不調:長時間労働や休みがとれない状況が続くと、身体的不調だけでなく、うつ病や適応障害などの精神的不調の発生リスクも高まります。
労働時間管理をはじめとした働き方改革は、健康維持にも不可欠な要素といえるでしょう。
次に男性特有の健康課題として以下2つが挙げられます。
- 更年期症状:加齢とともに男性ホルモンが減少していくことで男性の体にも生じる。40代後半から50代にかけて、疲労感、動悸、関節痛、イライラなどの症状が出現しやすくなる。男性は開始時期、終了時期、症状も人によってさまざまのため気づきづらい
- 前立腺がん
一方で女性特有の健康課題は、若い時期から継続的に発生するのが特徴です。
主には
- 月経に伴う不調(痛み、倦怠感、メンタルの不安定)
- 不妊治療や妊娠に伴う健康課題(ホルモン投与、つわり、胎動)
- 更年期障害(閉経前後の約10年間にあらわれる心身の不調)、
- 婦人科系疾患(卵巣がん、子宮頸がん) などがあげられます。
女性は20代、30代から何かしらの健康課題を抱えながら働いている人が多い一方で、男性は加齢とともに健康課題が顕在化してくる傾向があります。こうした背景から、健康課題への施策はどうしても女性の方に手厚くなりがちなため、公平性の視点が重要となります。男女共通の健康課題に加え、女性特有・男性特有の健康課題に対してプラスアルファの支援をどう設計するかが、健康経営を進める上で企業に求められています。
自分の体調を振り返る
勉強会では、ここではご自身の体調を振り返る問いかけを行い、参加者の皆さんに自分の体調を振り返ってもらいました。
振り返ってみると、自分自身のことでも意外と把握できていないことがありますよね。常に「今」の状態を正しく理解してケアすることは、仕事で成果を発揮するうえで非常に重要ですが、個人の力だけでは難しいことも多いのが実状です。そのため、企業が健康課題への支援策を整備することが、従業員一人ひとりがより高いパフォーマンスを発揮できる組織づくりにつながっていきます。
また、「多様性」とは、性別・国籍・年齢・身体的特徴などの表層的ダイバーシティだけでなく、経験・能力・価値観・家族構成・健康状態といった深層的ダイバーシティも含まれます。健康状態も多様性の一要素であり、こうした見た目ではわからない違いを認めて受け入れることもDE&I推進の観点からも非常に重要です。
健康課題にどのように向き合うべきか
ではそれぞれの健康課題にはどう向き合えばよいのでしょうか。
まず健康課題を抱える本人、上司、人事の3つの視点で行うべきことを整理しました。
まず本人は自分の健康状態を正しく把握し、それを言語化する、第三者に伝えるということが必要になります。
一方で現場の上司は
- 社内で活用できるリソースを把握し、必要あれば、本人に伝えること
- 相談しやすい組織づくりをする
人事の方は
- 現場のニーズ把握
- 社内のリソースの手配
などが求められます。
重要なのは全員がひとりで抱え込まないこと、そして現場の上司や人事がすべてを解決するのではなく、誰がどのように対応すべきかを整理することが大切です。
たとえば、健康診断の結果は個人情報であり、上司が把握することはできません。上司側から積極的に情報を聞き出すことは難しいため、本人が知ってほしいと思うことについては、自分で適切に伝える必要があります。どこまで伝えるかについては、本人があらかじめ線引きをしておくことが望ましく、上司側も伝えられた内容をもとに、業務上どのような支障が出るのかを判断したうえで、どこまで踏み込むかを見極めることが大切です。
健康課題と向き合う上で最も大切なことは、問題を切り分けることです。誰が解決すべき課題なのか、どの社内リソースが活用できるのか、そして各自がどんなアクションをとるべきかを明確にすることが、効果的な健康経営の推進につながります。
具体的に本人・上司・人事の方々がどんな行動を取ればよいか、また行動を取るうえで注意すべき点を併せて整理を行いランチ勉強会は終了しました。
ランチタイムの1時間という短い時間の中で、学びの多い時間となりました。健康課題は誰しもが直面する課題であり、自分の体に不調が生じたときにどう対応するべきかを、日頃から理解しておくことの重要性を再認識することができました。今井さん、貴重なお話ありがとうございました。
【DE&I研究会】
2023年4月に立ち上げたダイバーシティのすすめにて運営するコミュニティで、勉強会やコミュニティ形成を通じて、以下2つを実現できる場として設立。
- 本当に意味のあるD&Iが何かを共に考え、行動に繋げる原動力とする
- 自分の周囲を変えられる力を養い、会社に左右されない自分自身の望むキャリアや働き方を見つける
DE&I研究会では毎月1回ペースでランチタイムに勉強会を実施しています。
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