【勉強会報告】変わりたいけど変われないあなたへ(2025年9月16日)

2025年9月16日にDE&I研究会で第18回目となるランチ勉強会を実施しました。今回のテーマは「キャリアブレイク」です。

  • 「変わりたいけど変われない」
  • 「何かしたいけれど、どうしていいかわからない」
  • 「将来がなんとなく不安」

そんな思いを抱えている方に向けて、キャリアブレイクという考え方を切り口に、自分を整え、しなやかに生きるためのヒントをキャリアブレイク研究所の北野さんと共に考えました。

【勉強会概要】

  • タイトル:変わりたいけど変われないあなたへ
  • 登壇者: キャリブレイク研究所/ 所長 北野貴大さん
  • 実施日:2025年9月16日 12:00-13:00
  • 勉強会概要:
    • キャリアブレイクとは?
    • ブレイクしたら全員が良い転機になるの?
    • ディスカッション

【登壇者プロフィール】

キャリアブレイク研究所/所長 北野貴大(きたのたかひろ)

一般社団法人キャリアブレイク研究所 代表。大阪公立大学大学院 経営学研究科 特別研究員。大阪市立大学大学院で修士課程(建築学)を修了し、新卒でJR西日本グループに入社。「ルクア大阪」をはじめとするデパートプロデューサーとして従事。その後、2022年に退職し、人生と社会を俯瞰し見つめ直す欧州文化「キャリアブレイク」をテーマに一般社団法人を設立。調査研究を通して、キャリアブレイクのポータルサイトの運営、企業や自治体など働き方改革や働くリズムのアップデート支援を行う。著書に『仕事のモヤモヤに効くキャリアブレイクという選択肢』(KADOKAWA)、『キャリアブレイク ー手放すことはブランクではないー』(千倉書房)

【勉強会内容】

キャリアブレイクとは?

キャリアブレイクとは一時的な離職・休職などによって自分の人生や社会とのつながりを見つめ直すことです。働く上で、その仕事を「続ける」という選択、そして異動や転職などで仕事を「変える」という選択をしてきた方は多いと思います。でも、その中間にある「立ち止まる」という選択肢は、皆さんの中にあるでしょうか?

欧米ではキャリアブレイクが文化として根付いており、日本でも近年少しずつ企業が注目し始めています。産休・育休や介護休暇、リカレント、メンタル不調、定年前など、誰にでも訪れる転機のタイミング。そうしたとき、職場を離れることを「マイナス」とみなす企業は少なくありません。こうした現状から、社員ひとりひとりの転機を大切にし、それを包摂していく企業に変わるべく、キャリアブレイク研究所では企業向け研修を行っています。

研修の目的はキャリアブレイクを推奨するのではなく、「こういう選択肢がある」と知ってもらい、キャリアブレイクを文化としてシェアすること。そのうえで、意識・行動・組織の変化へとつなげていくことを目指しています。

転機は思いがけず訪れることもあれば、セルフマネジメントによって生まれることもあります。「変わらなきゃ」という気持ちから資格を取得したり、占いやAIに相談をして何かを新しくはじめる人もいるのではないでしょうか。

節目の語源である竹はしなやかに成長するために定期的に節をつくります。キャリアブレイクも同じ、成長のための節目をつくる大事なプロセスといえるのかもしれません。

ブレイクしたら全員が良い転機になるの?

キャリアブレイクをしたら、すべての人にとって良い転機になるのでしょうか?

実は、日本でもキャリアブレイクを活用している人は年間でおよそ150万人にのぼることがわかっています。さらに目的ごとに分けてみると、大きく以下4つの傾向が見えてきました。

目的は違っても、キャリアブレイクに入る人たちには共通するプロセスがあります。

最初のステップは「乖離」。ありたい姿と現実の間にずれを感じ、違和感が生まれる。ときにはそれが不調につながることもあります。ここで「離れる」という選択肢を知っている人は、一歩を踏み出すことができます。

離れてみると、主語が「私」になります。組織の中での役割から離れて、自分自身に意識が向くことで、さまざまな人との関わりから視野が広がり、その期間をどう過ごすかを自分なりに意味づけできるようになる。すると「自発」が生まれ、動き出す力になる。そして新しい出会いへとつながっていきます。やがて、人生と社会を俯瞰したときに、「社会の中で自分はどうありたいのか」、「どう社会の役に立ちたいのか」が見えてきます。そうして再び自分のありたい形に向かって前に進むことができる。これが、良い転機の循環です。 

キャリアブレイク研究所では、「キャリアブレイクしてよかった人」へのアンケート公開後、多くの反響がありました。さまざまな団体や自治体から「うちでも過ごし方を提供できる」、「協力したい」という声が多く寄せられ、良い転機を迎えるためのパートナーがたくさんいることがわかりました。現在は、そうした過ごし方を探せるサイトを運営し、書籍やメディアでの発信も行っています。

国や企業はこれまでGDP(国内総生産)で社会の豊かさを測ってきました。しかし今、その限界が見えてきています。次に必要なのは、GDW(Gross Domestic Well-being=国内総充実)。指標が変われば、目指す社会の姿も変わるはずです。キャリアブレイクは、まさにその新しいリズムを社会に取り入れる動きのひとつといえるのではないでしょうか。

ディスカッション

後半はディスカッションとして、北野さんとの質疑応答や実際にキャリアブレイクを経験された方のお話を伺いました。

実際にキャリアブレイク中の方からのお話

  • キャリアブレイクに入った背景:休みが取りづらい環境で限界を感じ、体調を崩す前に退職を決意した。(チャットでも実際に体調不良となりキャリアブレイクをされた方が多かったです)
  • 現在:これまでできなかった副業や新しい挑戦に取り組んでいる。
  • 実際に入ってみて:今までやりたくてもできなかったことに取り組めていて、充実している。始めたことがどこにつながるかはまだ分からないが、この時間は決して無駄じゃないと感じている。
  • キャリアブレイクに入る前に不安はあったか:取る前は経済的な不安があったが、自身の貯蓄額と照らし合わせてどれくらい休めるか事前に計算をしておいたので、結果的に今は不安なく生活できている。(チャットでも意外と何とかなった!という方が多くいらっしゃいました)

質問・ディスカッション

  • キャリアブレイク中は、物理的に「離れる」方が多いか?
    確かにそういう人も多いですね。でも必ずしも遠くへ行く必要はありません。たとえば図書館や本屋。そこはさまざまな価値観に触れられる場所です。そういう場にいるだけでも「離れた」感覚を得やすいんです。
  • 企業におけるキャリアブレイク制度の現状は?
    休職制度は、育児休業や介護休業のように法律で決まっているものもありますが、実は企業ごとの色が強く出る部分なんです。最近は「理由を求めない休暇」(マルチパーパス)を認める企業も増えています。休むのに理由がいらないと気づけるかどうか。そしてそれを受け止める上司や同僚がいるかどうか。そこが風土になるかの分かれ目です。

    今は「制度はあるけれど風土はない」企業が残念ながらまだ多いです。それを変えていくためには「いい転機になった」というキャリアブレイクの事例を社内で共有することが一番の近道だと思います。なぜそれが良い転機になったのかを可視化していく。それが風土づくりにつながっていくと思います。

最後に

転機を「包摂」するってとても面白い考え方です。人の転機がよくなれば、社会も絶対に良くなる。研究を通じてわかったのは「根本的には大丈夫」ということ。人間にはいろんな可能性があります。100年生きるとすれば、1年休むのは人生のわずか1%です。1%くらい、ぼーっとしていたって大したことないんです。自分の身に起きたときも、周りの人に起きたときも「大丈夫だよ」と思える社会。そんなマインドが広がっていけば、きっともっといい社会になると信じています。

ランチタイムの1時間という短い時間の中で、多くのチャットでのご参加もいただき、
実際に

  • キャリアブレイクを取るかお悩みの方
  • キャリアブレイク中の方
  • キャリアブレイク経験者の方

とさまざまなフェーズの方々にご参加いただき、参加者同士の経験などもシェアされ、とても気づきの多い時間となりました。

キャリアブレイクは何かを「やめる」ことではなく、次のステップに進むために「立ち止まる」、「節目をつくる」ことなのだと感じました。制度や環境がどうであれ、自分の人生に立ち止まる時間を取り入れることは決してマイナスなことではないこと、そしてそれを受け止め合える社会や組織風土が広まっていくことの重要性を改めて認識できました。

また北野さんとはアフタートークとして「企業への働きかけとしてどのような形が効果的か」という点についてもお話をし、引き続き、誰もが働きやすい職場作りに向けてどうすればよいかを考えるうえで新しい視点をいただきました。

北野さん、貴重なお話ありがとうございました。


【DE&I研究会】

2023年4月に立ち上げたダイバーシティのすすめにて運営するコミュニティで、勉強会やコミュニティ形成を通じて、以下2つを実現できる場として設立。

  • 本当に意味のあるD&Iが何かを共に考え、行動に繋げる原動力とする
  • 自分の周囲を変えられる力を養い、会社に左右されない自分自身の望むキャリアや働き方を見つける

DE&I研究会では毎月1回ペースでランチタイムに勉強会を実施しています。

※詳細はこちら

 メンバーは随時募集しております!ご興味ある方はぜひ一度ご連絡ください!

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