選択的夫婦別氏制度って?旧姓の通称使用とはどう違うの?

こんにちは!ダイバーシティのすすめライターの生方です。これから定期的にダイバーシティ推進に関連した最新ニュース解説の記事を投稿したいと思います!

本日は選択的夫婦別氏(別姓)制度についての、こちらの記事を紹介します!

https://news.yahoo.co.jp/articles/5ef6c3fb34933272e17d48c8762b0577e1139665

夫婦の姓についての議論は、これまでも何度となく話題になってきましたが、改めて争点はどこにあるのか、を考えながら読んでみました。記事の解説に加え、私自身の生い立ちから夫婦別姓についての意見も述べてみようと思います。

何が起きている?争点は?

まず、何が起きているのかをまとめてみます。

政府は、第5次男女共同参画基本計画の中で「旧姓の通称使用に法的効力を与える制度をつくる」という方針を示しています(現在第6次男女共同参画基本計画策定中)。すなわち、結婚して配偶者の姓に変わったあとも、旧姓の使用を法的に認めるという方針です。

一方で、今回のニュースでは日本労働組合総連合会の芳野会長は、「旧姓使用を法的根拠にすること自体が連合としては反対」とし、あくまでも選択的夫婦別氏制度の導入が必要であると明言しています。

芳野会長の「何の説明もなく認められない」という発言もあいまって、政府が選択的夫婦別氏制度導入の議論にふたをしているのではないか?と批判が集まっているようです。

そもそも「旧姓使用」と「選択的夫婦別氏制度」は具体的にどう異なるのでしょうか?

旧姓の通称使用とは「戸籍上は結婚後の姓(新姓)のままだけれど、仕事や社会生活では旧姓を使える」という仕組みです。この通称使用に法的な裏付けを与えて「使える場面を増やしていこう」というのが政府の方針です。

一方、選択的夫婦別氏制度は、結婚しても同姓にするか、別姓にするかを夫婦が選べる制度です。日本は男性又は女性のいずれか一方が、婚姻時に必ず氏を改めなければならないと現行民法で義務付けられています。(驚くことに改姓を義務付けている国は世界で日本だけです!)

政府案(高市総理の私案)はあくまでも「夫婦の氏が同一であることは維持し、婚姻などで氏を改めたものが旧氏を通称として称する機会を確保するため」の制度なので、戸籍上の姓が変わるかどうかという点が争点になっています。
夫婦別姓の目的が(旧姓の通称使用の拡大によって)不便・不利益をなくすことなのか、それとも戸籍上の氏を自分で選択できる(自己選択権の拡大)と捉えるのかを見極める必要がありそうです。

そもそもなんで「夫婦同姓」なの?

そもそも、なぜ日本では今も「夫婦同姓」なのでしょうか?

さきほども書いたように、結婚後の改姓が法律で義務付けられている国は世界中で日本だけです。

夫婦同姓の背景には、明治時代につくられた「家制度」があります。家という単位を重んじ、同じ姓を名乗ることで一体感を保つ。戦後、家制度そのものは廃止されましたが、「夫婦の氏は同一とする」というルールだけが残った、というのが現在の形です。その結果、日本では民法上、結婚する場合は必ずどちらかの姓を選ばなければならず、別姓という選択肢は用意されていません。そしてそれは夫の姓でも妻の姓でも良いとされていますが、実際には90%以上の夫婦が夫の姓を選んでいるというのが現状です。

1990年代から、選択的夫婦別氏制度については何度も議論されてきました。2015年には夫婦別姓での婚姻を認めていない民法の規定が憲法違反ではないかという最高裁裁判もありましたが、合憲判決が出ています。

また日本国内だけでなく国際機関からも日本の夫婦同姓制度については繰り返し指摘を受けてきました。国連の独立機関である国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、「法律婚をする夫婦の約95%において女性が姓の変更を余儀なくされているという現状を踏まえると、民法の規定は間接的差別に該当すると言わざるを得ない」と指摘しています。この問題はCEDAWのフォローアップ項目にも指定されており、日本政府は2年以内に取り組みの状況を報告するよう求められていますが、議論は足踏みを続けている状態です。

結果として最初に本格的な議論が始まってから30年以上が経った現在も、世界では当たり前になっている夫婦別姓や選択的別姓が、日本ではまだ法的に認められていないという状況が続いています。

夫婦別姓への支持率

では実際に夫婦別姓を支持している人はどのくらいいるのでしょうか?

令和3年に法務省が行った調査では、夫婦の名字の在り方に関する設問について、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」と答えた方の割合が27.0%、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」と答えた方の割合が42.2%、「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」と答えた方の割合が28.9%となっています。つまり、7割以上の人が何らかの形で旧姓使用を柔軟に認めるべきと考えています。

さらに回答者を女性に絞り、年代別に見てみると、現制度(夫婦同姓制度)維持を希望している人は年代がさがるにつれて減少していっていることがわかります。

 出典:夫婦の氏に関する調査結果の整理

一方で、「旧姓の通称使用」と「選択的夫婦別氏制度」ではそこまで差がないことも事実のようです。実際には旧姓が通称として使えればよいと考えている女性と、同姓・別姓を選択できるようにしてほしいと考えている女性は、10~30代においては半々といえそうです。

選択的夫婦別姓の議論において、制度導入によって生活が変わる人は外で働く女性の一部となります。そのため大多数の人(特に男性)は自分自身の生活に変化が生じません。民主主義の多数決の原則でいえば、マイノリティのためにそこまで時間を割いて議論する必要があるのかといった声もSNSなどでも散見されます。当事者でない人も交えて、マイノリティの人たちへの政策を考えるという民主主義のシステム自体にやや違和感を感じますよね…

(当事者抜きでの施策検討は政治だけでなく企業内でもあるあるです。)

実際に現行制度で不具合を感じている人たちの声を適切に踏まえて、議論を進めてほしいなと心から思います。(LGBTQなどのマイノリティの権利向上政策の議論なども同様)

ぼやき

最後に私自身の生い立ちから、夫婦の姓への個人的な考えを述べてみようと思います。

私は生まれたときは韓国籍でした。生まれも育ちも日本ですが、祖父母が韓国人、両親が在日韓国人であるため、国籍は韓国、名前も韓国の名前です。両親は別姓です。
正直に言うと、自分の苗字にとてもコンプレックスがありました。田舎で育ったことも影響していると思いますが、学校生活では日本ではなじみのない苗字を理由に嫌な思いをしたこともありました。そのため日本人の夫との結婚を機に、日本に帰化し、日本の苗字になれたときは、素直にうれしかったというのが本音です。

夫婦別姓を支持する声が多い中、望んで夫の姓になった私は立場としては逆ですが、苗字に対してコンプレックスや強い思いを持つという意味では、姓を選択できる制度に強く賛成です。

私はたまたま改姓を望んで受け入れましたが、私と同じ理由で改姓したくないと思う人も多くいると思います。そしてその違いが、「戸籍上の名前」なのか、「通称として使える名前」なのかという点は、想像以上に大きいと感じています。

私の会社では、結婚後も旧姓のまま働き続ける方がほとんどです。氏名が含まれるメールアドレスや社内システムのアカウント名が結婚を機に変わることはありませんし、名刺も基本的には旧姓のままです。
ただし人事に紐づく情報、たとえば給与関連の案内や健康診断の結果などは、必ず戸籍上の名前で届きます。したがって、部署の人たちにも自分の戸籍名が知られ、結婚や離婚といったプライベートな事情も、意図せず共有されてしまいます。「苗字が変わるだけ」と言えばそれまでですが、実際にはこうした細かな負担が積み重なります。

通称自体にあまりなじみがない人も多いと思いますが、私の周りには日本の苗字を通称使用している親戚がたくさんいます。母も通称名を持っています。通称で生活している人を身近に見ていて感じるのは、結局通称使用がどれだけ広がっても戸籍に別の名前が存在する限り、2つの名前を使い分けなければならない。そして絶対に戸籍名でしか扱えない場面もあるということです。

夫婦同姓のデメリットとしていわれている、改姓に伴う煩雑な手続きや、キャリアの分断、アイデンティティの喪失感も、戸籍上の氏名選択ができないのであれば抜本的な解決にはなっていないように思います。

これらすべては改姓した側だけが被るものです。先にも述べたように婚姻時に妻の姓を選ぶ夫婦は1割未満です。なぜ妻の姓を選びたくないかというアンケートでは、仕事上の不利益、生まれ持った氏名を変えたくない、面倒くさいといった理由があるそう。それって結局妻側が全部負っていることですよね…?

でも一番はやはり「みんなそうしているから」だと思います。結局みんな「普通」という概念に縛られているんですよね。DEIの考えが広まってきた令和の時代にも9割の夫婦が夫の姓を選んでいる。この長年の慣習を変えるのは不可能に近いと思います。仮に変わったとしても改姓する側の負担は何も変わらない。

私が大切だと思うのは、「価値観をそろえること」ではなく、「選択肢を用意すること」です。同姓を選ぶ人もいれば、別姓を選びたい人もいる。選択肢が増えることで知らず知らずのうちに苦しめられている「普通」の概念がなくなり、無意識のうちに生まれる男女ギャップを少しずつ減らしていけるのではないかと思いました。今回のニュースをきっかけに、自分の生い立ちからそんなことをあらためて考えてみました。

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