【勉強会報告】インクルーシブデザインをテーマに行動変容のきっかけを考える(2024年6月19日)
6月19日にDE&I研究会で第8回目となるランチ勉強会を実施しました。今回は「インクルーシブデザインをテーマに行動変容のきっかけを考える」をテーマとして、障がい者と共に生きるために、私たち一人一人ができること、自らの行動に変えていくために必要なことについて考えました。
【勉強会概要】
- タイトル:インクルーシブデザインをテーマに行動変容のきっかけを考える
- 講師: インクルーシブ ブランジェリーブランドAonC 、アパレルブランドTURTLES PLUS 代表/井上夏海さん
- 実施日:2024年6月19日 12:00-13:00
- 勉強会概要:
- インクルーシブデザインとは
- 障がい者市場を取り巻く状況
- インクルーシブへの関心をより高めるためには
【講師プロフィール】
インクルーシブ ブランジェリーブランドAonC 代表
お名前:井上 夏海さん
略歴:
2018年、慶應義塾大学文学部心理学科を卒業後、アクセンチュア株式会社にて様々なプロジェクトに携わる。
その後、欧米でインクルーシブ・デザインが注目され、障がい者や高齢者にも使いやすい製品の開発に力を入れていることを知り、アジアでこの分野を追求することを決意。
2023年インクルーシブランジェリーブランドをオープン。続けて、国内外でモノづくりのプロフェッショナルとして事業を展開する(株)ビクトリーと共にファッション分野での開拓を開始。
【勉強会内容】
1. インクルーシブデザインとは
皆さんは「インクルーシブデザイン」という言葉を耳にしたことはありますか?
ユニバーサルデザインというと、もう少し聞きなじみがあるかもしれません。インクルーシブデザインはユニバーサルデザインとも混同されやすく似た意味を持つ言葉ですが、厳密にいうと大きな違いがあります。
ユニバーサルデザインは、ジェンダーや年齢・国籍・文化などの違いに関わらず、できるだけ多くの人が利用しやすいデザインを設計・改良することです。一方で、障がい者や高齢者などのマイノリティの人々を含めたデザインを、デザインの初期段階から巻き込んで考えていくことをインクルーシブデザインと呼びます。
2. 障がい者市場を取り巻く状況
2024年現在、世界人口に占める障がいのある人の割合は約15%といわれています。
実際に生活していると、あまり障がい者の方と接する機会は多くないかと思いますが、世界人口にすると約13億人もの人が障がいをもって生活しています。そしてその障がい者本人や家族・友人を合わせた方々の購買力の総額は約13兆ドルといわれており、障がい者市場が決して無視できない非常に大きなマーケットであることが分かります。
一方で、インクルーシブファッションはまだまだ未開拓の市場で、需要が供給を上回っているといわれています。車いす使用者のうち、既製服を購入した73%の方が「車いすでの使用に適していない」と感じているというデータや、カスタマイズされた高価な衣類を購入できる車いす使用者は全体の8%に過ぎないというデータもあり、ファッションの分野ではまだまだ障がい者を無視したデザインがマジョリティとなっています。
そしてファッション業界に限定せずとも、障がい者に配慮した商品を提供している企業は約3.6%といわれており、非常にマイノリティであることが分かります。
では、障がい者向けビジネスが広まらない理由・課題はどこにあるのでしょうか。
障がいのレベルによってもニーズが異なり、それぞれのニーズに合わせた商品を展開するにはコストがかかりすぎるという点、そして軽度障がい者にとっては、そもそも障がい者用衣類へのニーズが高くないといった点が課題になっていると考えられます。
つまり、ターゲットを絞らずに「障がい者」をひとくくりにしてしまっていることが、障がい者ビジネスが難しい要因になっていると考えられます。このように障がい者市場を取り巻く環境や、障がい者ビジネスの課題を、健常者(マジョリティ)や企業がまだまだ把握できていないというのが現状です。
3. インクルーシブへの関心をより高めるためには
では、どうすれば環境問題や労働問題と同じように、SDGsのひとつとしてインクルーシブ(障がい者を取り残さない)をより多くの人の関心のひとつにできるでしょうか。参加者の皆さんと意見交換してみました。
最も多かった意見は、実際に障がい者向けプロダクトがどんなものなのかを「知る」ということ。普段障がい者の方と接する機会の少ない人であれば、洋服ひとつをとっても、車いすを使用している方がどんな洋服を着ているか、それをどのように着脱しているか、なかなか想像することはないと思います。一見、健常者の方と同じ洋服を着ているように見えても、ヘルパーさんの手を借りないと脱ぎ着できなかったり、既製服を着脱しやすいようお直しに出してカスタムしていたり、見えない工夫をされているケースが多いのが現状です。
また、障がい者向けに作られた商品は、ネットなどの限られた場所でしか販売されていないため、健常者が普段生活していて意識せずともそれを目にすることはあまりないというのもインクルーシブへの関心が高くない要因のひとつといえます。
健常者が絶対的マジョリティである市場で、マイノリティの方を取り残さないためには、まずマジョリティの意識を変えること、つまりマイノリティの存在を認知することが必要であるといえます。たとえば、我々が普段よく行くお店にインクルーシブデザインの洋服が並んでいたり、ファッションイベントのランウェイで車いすのモデルが出演していたり、マジョリティの市場の中でインクルーシブデザインの存在を示していくことが、インクルーシブへの関心を高める第一歩になるのではないでしょうか。
ランチタイムの1時間という短い時間の中で、参加者の皆さんとも活発に意見交換をすることができ、相互に学びの多い時間となりました。インクルーシブデザインやプロダクトに少しでも興味を持った方は、どんなものがあるのかぜひ調べてみてくださいね!
【DE&I研究会とは】
2023年4月に立ち上げたダイバーシティのすすめにて運営するコミュニティ
勉強会やコミュニティ形成を通じて、以下2つを実現できる場として設立
- 本当に意味のあるD&Iが何かを共に考え、行動に繋げる原動力とする
- 自分の周囲を変えられる力を養い、会社に左右されない自分自身の望むキャリアや働き方を見つける
メンバーは随時募集しております!ご興味ある方はぜひ一度ご連絡ください!