【勉強会報告】地方のジェンダー課題について考える(2024年11月21日)

11月21日にDE&I研究会で第12回目となるランチ勉強会を実施しました。今回は「地方のジェンダー課題について考える」をテーマとして、地方女子プロジェクト代表の山本蓮さんをお迎えして、勉強会を実施しました。

大都市圏の男性に比べて、地方で働く女性の収入は6割程度。意思決定に携わる仕事に就ける女性はわずか。地方では性別役割分担意識が根強く、家庭では女性が働き、男性は宴席を楽しむという構図が当たり前…。そんな地方の現状を知り、私たちが今できることは何かを一緒に考えました。

【勉強会概要】

  • タイトル:地方のジェンダー課題について考える
  • 講師: 山本 蓮さん
  • 実施日:2024年11月21日 12:00-13:00
  • 勉強会概要:
    • 地方女子プロジェクトについて
    • 女性が地方を去る理由
    • 地方のダイバーシティ推進を図るには

講師プロフィール

地方女子プロジェクト代表
山本 蓮さん

略歴:
自身が地元で感じてきた経験をもとに、地方における女性のための活動を立ち上げる。
2021年、内閣府後援「生涯活躍のまち・つる ビジネスプランコンテスト」特別奨励賞受賞。
2023年より、経産省採択事業の未踏的女子発掘事業GRITに参加し「地方女子プロジェクト」を運営開始。
2024年6月放送のNHKクローズアップ現代『女性たちが去っていく 地方創生10年・政策と現実のギャップ』に出演し、大きな反響を呼んだ。

【勉強会内容】

1. 地方女子プロジェクトについて

今回ファシリテーターを務めてくださった山本 蓮さんが立ち上げた「地方女子プロジェクト」。まずはその取組みについてお話しをお聞きしました。

「地方女子プロジェクト」の立ち上げの背景にあるのは、若年女性流出問題。日本では約8割の地域から若年女性が首都圏に流出し、人口減少・地方衰退の一因になっているといわれています。

【出典】若い女性流出 悩む地方 男女比崩れ人口減加速. 日本経済新聞.2019-9-6 15:30
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO49491730W9A900C1EAC000/

また2050年までに20代から30代の女性が半減する地域はいずれ消滅する可能性があるといわれており、その自治体の数は全国で744にものぼります。国・地方自治体が人口減少に歯止めをかけたいという社会課題になっています。

【出典】2024年6月17日(月) 女性たちが去っていく 地方創生10年・政策と現実のギャップ
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4915/

国や各自治体の大きな社会課題と認識されている一方で、メディアではあくまでも「女性」が地方から出ていってしまっていることが問題であるとの報じ方が多いのも事実です。

地方女子プロジェクトでは、若年女性流出問題は本当に「女性側」の問題なのか?という点にフォーカスし、当事者である女性たち100人へのインタビューを実施し、それを動画にして発信するという活動を行っています。

2. 女性が地方を去る理由

では地方女性が首都圏に流出してしまう本当の理由、課題はどこにあるのか。実際にインタビューを行った結果から見えてきた課題は主に以下の3つでした。

 ①やりたい仕事がない
 ②結婚・出産の圧を感じる
 ③地域の女性役割が嫌だ

①やりたい仕事がない

1つ目の「やりたい仕事がない」と答えた人の中には、「地元にある仕事といえば、看護師、介護士、保育士、公務員、銀行員、教師などのイメージ。そこに自分がやりたいと思える仕事はなかった」と答えた人や、「今自分がいる業界と地域では女性の先輩やロールモデルがいない」といった意見がありました。

実際に男女間の賃金格差を調べると首都圏に比べ地方はその格差が大きく、女性が男性と同じように働きたいと思っても、地方では「そもそも仕事がない」というのが現状です。

【出典】都道府県別の女性の就業状況等について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001298022.pdf

②結婚・出産の圧を感じる

女性が地方を離れる理由の2つ目には、「結婚・出産の圧を感じるから」という意見がありました。「東京で就職することを親に伝えたら『女がそんなに一生懸命働かなくていいよ。それよりはいい人見つけて、結婚して』とやんわり反対された」、「地域おこし協力隊で赴任したが、地元の人たちに『女性は嫁にもらわれて家庭に入って一人前』と言われた」といったエピソードがありました。

やはり首都圏より未婚で働く女性が少ない分、「結婚=女性の幸せ」と捉える風潮が強く、それが地元で仕事をすることへのモチベーションを下げてしまっているという課題が見えてきました。
実際には専業主婦になることを望む未婚女性は近年減少し続けており、未婚のまま働きたい、もしくは子どもを持たずに働きたいという女性が増えているのが現状です。


【出典】ウーマンズラボ 女性が希望するライフコースに変化1987〜2021年までの変遷
https://womanslabo.com/marketing-research-240514-1
【出典】内閣府男女共同参画局「理想とする女性のライフコース」
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/noryoku_lifeplan/pdf/life2-6.pdf

③地域の女性役割が嫌だ

3つ目の「地域の女性役割が嫌だ」と答えた人の中には、「地域の行事や集まりで、女の人が料理をよそって、男の人が座って食べてるのを見て、私も将来こんなことやらなきゃいけないのかな...と思う」と答えた人や、「お盆やお正月に、料理を準備したり運んだり忙しそうなのは女の人、座って食べて飲むだけの男の人を見てきた。『将来、女の子なんだから気の利く人間になりなさい』と言われた時は、女の人って生きづらい、と感じた」といった意見がありました。

家の中だけでなく、地域の集まりや行事などでも、男性が仕切り役、女性が事前の準備や片付けを担うのが当たり前になっている地域も多く、地域活動における女性像の固定化は根強いようです。

その他

また性的マイノリティの方の意見として、「地方では女性2人で暮らしていける給料じゃない」、「まだまだ地元では自分が同性のパートナーがいることは言える雰囲気じゃない」といった理由も。男女格差だけでなく、セクシュアリティにおける理解度がまだまだ追いついていないことも若年女性流出の一因といえそうです。

3. 地方のダイバーシティ推進を図るには

地方の企業や自治体においてダイバーシティ推進が図れていない理由、そしてダイバーシティ推進を図っていくにはどうすればいいかについて、参加者の皆さんとディスカッションを行いました。実際に東京から地方移住された方、男性の方、男女共同参画推進委員会にお勤めだった方などにもご参加いただき、チャットも交えてさまざまな意見交換を行いました。

ダイバーシティ推進が図れていない理由
  • そもそもジェンダー課題に対する意識や危機感がなく、そのマインドセットを変えていこうとする人材がいない。
  • 地方はコミュニティが狭いため、同調圧力が強く反発しづらい。
  • 女性の8割が結婚して子どもがいるため、仕事は生活費を工面する手段のひとつと考えている。仕事のやりがいや自身のキャリアよりも給与の高い仕事を選ぶ傾向にあり、仕事に対する意識が異なる。
  • ダイバーシティに対する優先順位が低い。お金がない。
  • 女性流出を女性の問題として捉えているため、男性の中に当事者意識がない。
  • 企業のダイバーシティ推進は本社でしか浸透していない場合が多く、本社と地方支社で意識にギャップがある。
  • ダイバーシティや女性活躍は遠い話で自分事になっていなかったり、自分たちのコミュニティを変えられる、変えようという意識がない。こういうものだからと決めつけてしまっている。

ディスカッションでは以上のような意見が、地方でダイバーシティ推進が図れていない理由としてあげられました。
首都圏と地方を比べると、やはりジェンダーに対する意識にギャップがあることが最も大きな要因といえそうです。ダイバーシティをすすめることで若年女性流出や人口減少を食い止めるだけでなく、多様な人材の確保や地域活性化など組織全体に良い影響をもたらすということを組織全体で本質的に理解する必要があると感じました。

ランチタイムの1時間という短い時間の中で、参加者の皆さんとも活発に意見交換をすることができ、相互に学びの多い時間となりました。首都圏と地方、本社と支社は今回の一例にすぎず、ジェンダー課題に対する意識の差はあらゆる場面で感じられると思います。今回の勉強会が、皆さんの所属組織や出身地の自治体におけるダイバシティ推進の価値について考えてみるきっかけになれば嬉しいです。

【DE&I研究会とは】

2023年4月に立ち上げたダイバーシティのすすめにて運営するコミュニティ

勉強会やコミュニティ形成を通じて、以下2つを実現できる場として設立

  • 本当に意味のあるD&Iが何かを共に考え、行動に繋げる原動力とする
  • 自分の周囲を変えられる力を養い、会社に左右されない自分自身の望むキャリアや働き方を見つける

メンバーは随時募集しております!ご興味ある方はぜひ一度ご連絡ください!

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